2010年7月15日木曜日

台湾人民建国宣言

台湾共和国臨時政府旗


「台湾の声」からの転載

台湾人民建国宣言


 アンディ チャン

3月にAC通信No.315で台湾人の宣言を新聞広告に掲載する計画を書いたが、あれから4ヶ月たってようやく7月10日にニューヨークタイムスで「台湾人民建国宣言」を掲載することになった。

これは台湾人が世界に向けて独立建国の意思を発表し、各国の支持を求めたものである。終戦から65年たって、台湾人が初めて建国の意志を表明した記念的な宣言である。ニューヨークタイムスはアメリカ全国のスターバックスで購入できるので、興味のある方は記念に買うことをお勧めする。

この歴史的な宣言を出すまで、いろいろな紆余曲折があった。同じ台湾人でも発表の目的や文面に異議を唱える人、意味のわからない人がいて、計画を始めてから掲載までに半年以上もかかった。これから書く経緯は、すなわち台湾人如何に思想的に混乱し、建国に団結尽力するのがどんなに難しいかを表している。

●なぜ建国宣言なのか

終戦から今日まで、何人かが「独立宣言」を発表している。しかしこれらの宣言は台湾人に向けて独立を呼びかけたもので、台湾人民が世界に向けて建国の意思を発表した事は一度もない。ジョン・タシック(John Tkasik)氏など多数の外国政治家、評論家が「台湾人はなぜ自分で建国宣言をしないのか」と述べているのに、誰も気がつかない。

人民に向けて我々は独立すべきだ、権利があると「呼びかけ」ても、人民が世界に向けて「我々は建国する」と意思表示をしない。従って世界諸国は「台湾人は何をしたいのか、ハッキリ言わなければ援助のしようがない」と言う。私はこの事実に気がついたから独立宣言を書く計画を立てたのである。それでも後述するように仲間の意見が揃わず異議がたくさん出てきた。

「独立ではない、建国だ」と言うことが大切である。独立は中華民国から独立することである。サンフランシスコ平和条約によって台湾の地位は未定となり、台湾人民は国籍をなくした。だから台湾人は中華民国から独立するのではなく建国するのである。これは重要なことで、この違いを理解していないから台湾人は団結できないのである。

●建国宣言全文(日本語)

1945年日本は連合軍に無条件降伏した。1951年9月、日本国は米国など48カ国とサンフランシスコ和平条約を締結した。1952年4月28日、条約の発効により臺灣及び澎湖群島は未確定領土となり、同時に臺灣人民も無国籍となった。臺灣及び澎湖群島の主権は当時六百万の臺灣人民及びその子孫に属する。

臺灣人は蒋介石が中国大陸から連れてきた中国人ではない。中国人は長年臺灣に住んでいながら臺灣を国と認めない。中華民国は蒋介石が臺灣に持ち込んだ亡命政府の集団で、多くの国は既に滅亡した国と認めている。中華人民共和国(中国)は臺灣と澎湖群島が中国領土であると声明したがこれは事実ではなく、国際法的根拠はない。台湾人民は絶対に承認しない。

臺灣人民は強い意志をもって「臺灣」と呼ぶ独立国家を建設し、互恵平等な国際関係を建設することを世界に宣言する。臺灣は臺灣人民の所有するものである。我々は天賦の自決権を行使して臺灣人の民主国を建設する。我々は世界各国及び民主を愛する人々の承認と熱烈なる支持を希う。


●台湾人の定義

SFPTの締結によって台湾は國際地位を失い、人民は無国籍となった。だから当時の600万の台湾人民とその子孫には建国する権利がある。

文章は簡単明瞭に書くのがもっとも難しい。建国宣言は誰が(who)、なぜ(why)、何をするか(what)を宣言するのである。簡単に目的を述べるだけでよく、歴史的意味や地理的環境、中国人の影響などを書く必要はない。我々は教科書をつくるのでないし、外国人を教育するわけでもない。台湾人は無国籍である、建国する権利がある、意思がある。そのことだけを誰が読んでも理解し同意してくれるように宣言するのだ。

ところが多くの台湾人は台湾に住む中国人にも建国に加わる権利があるという。台湾に住む中国人の殆どが中華民国を支持し、台湾建国に反対だ。極小数の中国人賛同者を入れたがるのは中華民国の心理的影響を受けた台湾人である。中国人の影響を受けたものは宣言の「600万の無国籍台湾人(people of Taiwan who lost their nationality)」に異議を唱えて、「2400万の台湾の住民(people living on Taiwan)」全員を入れるべきだと言う。

台湾人は内弁慶が多い。外省人の一人二人が独立建国に賛成と言えば有頂天になって外省人も入れろと騒ぐ。「台湾人は中国人ではない」と言えば大賛成なのに、中国人を排除すると「中国人に睨まれる」から台湾に住む中国人も入れろと言うのだ。

●中国人の影響


独立とは被統治者が統治者の圧政に抵抗して独立することで、建国とは自由な人民が独自の決心をもって自分の国を創ることである。これは大切なことだ。

台湾人は中国人ではない、中華民国は流亡政権である、と言えば台湾人は賛成する。ところが台湾人とは何かと簡単に書くと、多くの人が228事件の大虐殺と白色恐怖を書き入れるべきだと主張する。そうすると台湾人は自力で建国するのではなく中華民国から独立することになる。多くの優秀な人材が中国人に虐殺、迫害されてからようやく目が覚めて、「中華民国から独立」
する、という理論になる。そうなると中華民国や中国も当然のように暴力や武力行使で干渉してくる。台湾人は中国恐怖症から抜け出せない。

建国は中華民国から独立するのではない。自分の国を創る天賦の権利があり、その権利を行使するのであって中華民国や中国とは関係がない。意識の混乱があるから建国宣言に異議を唱えるのだ。

台湾建国宣言に中国人を加えるのは「炊き上げたご飯に鼠の糞を混ぜる」ようなものだ。私は「台湾人と台湾に住む人々」の違いだけで何ヶ月も論争を重ねた挙句、他人に頼るのは時間の浪費である、自分でやるしかないと言う結論に達した。前にも書いたように、団栗の背比べでガヤガヤ論争しても結果は出ない。

● アイデンティティの混乱と中華民国体制

台湾建国の阻害はアイデンティティの混乱である。台湾は民主制度があり、選挙で政権をとれる、正名制憲を果たせると主張するグループが、民進党や台聯党などの「中華民国の政党」を作って、中華民国の体制を支持しながら中華民国に反対している。彼らは中華民国の制度で、選挙で政権を取れれば「正名制憲を通して台湾独立ができる」と宣伝する。だから民進党や台聯党などの中華民国の政党に惑わされた人々は自力建国に参加しないし、民衆を騙して建国に参加させない。

別のグループは「台湾名義で国連加盟」を推進する。国連は台湾という国名があってから加盟できる、中華民国が台湾の名で国連加盟は出来ない。このグループも台湾建国の阻害である。

台湾では体制外運動といっていろいろなグループが独立建国運動を熱心にやっているが、彼らも体制外から中華民国を無視して国作りをするのではない。公投護台湾連盟は無抵抗運動主義者で、政府に対し抗議や座り込みをするが、もともと公民投票は中華民国の法律である。彼らも結局は「中華民国から独立」しているのだ。

「人民作主」運動は台湾各地を行脚して独立意識を喚起させようとしているが、同じように「中華民国の人民が国を主導する」と言う主張で、中華民国から脱出できない。

抗議デモンストレーションも同じである。中華民国に抗議するため、中華民国政府の許可を申請して、デモの路線、期日などを書いて許可を戴いてからデモをやる。幼稚園の遠足じゃあるまい。

台湾人は平和な抗議で政権を倒すことが出来ると思っている。政権を倒すことは平和でも暴力でも同じく革命である。しかし国民党が革命なら流血だ、と言えば大人しくなる。誰が暴力を行使して革命を流血事件にするのか?中国人ではないか。

独裁政府が簡単な人民のデモンストレーションで大人しく政権を渡す筈がない。もう少し効果的な方法を考えるべきだ。本気で中華民国を倒す研究をしなければならない。方法はいくらでもあるし今の方法はダメともわかっている。

●資金の問題


宣言を掲載するには署名と資金が必要だ。ある人は個人の署名でなければダメと主張した。署名運動は難しい、台湾で署名運動をやれば半年以上かかる事は明白である。台湾で公然と署名運動をやれば国民党の妨害が入るし、暴力沙汰になるかもしれない。個人の署名より団体の署名のほうが紙面も少なくて済む。

私が台湾に帰って各団体を訪問し、建国宣言の趣旨を説明したあと、各団体の代表が同意したあと、理事会で同意を得てから始めて名前を入れたのである。それだけ時間と手間がかかるのである。それでも発表寸前になって私が団体の同意と署名を得ないで勝手に名前を入れたと誹謗した人もいた。

資金を集めるのも至難のことだった。私が募金運動をすると聞いて詳細も聞かずに寄付してくれた親友には心から感謝している。しかし、個人的な寄付はあっても残りの金は集まらず、資金難は最後まで続いた。このような困難を知らず、ニューヨークタイムス以外にも台湾の新聞、各国各地の新聞にも掲載しろと勝手なことを言う人もいた。金が十分にあったら出来るが金も出さないで何ができるのか。

私は肩書きがなく利権の授受もない在米評論家である。有名になりたいから宣言をするのではない、台湾のためである。ある有名人は発起人でなければ彼の業績にならないから参加しないと言った。ある団体は「小さな広告などは価値がない」と言っ断った。歴史的、画期的に意義のある仕事を理解できない人が、自分の名を挙げるために政治運動をやる。人間のエゴとは空しいものである。

●建国宣言の歴史的意義


台湾人は中国人ではない。中華民国流亡政府は台湾人の建国に口出しする権利はない。台湾人が世界に向けて建国する意思を発表したのは史上初であり、この宣言があってこそ各国は支持応援をしてくれる。この宣言は中華民国や中国の台湾に対する勝手な主張を退ける第一歩であり、歴史的意義は大きい。

台湾建国であって台湾独立ではない、この事を理解すれば台湾人のアイデンティティが明確になり、諸団体の意見が一致して団結することが出来る、中国人の心理的圧力に打ち勝つことも出来る。

台湾ではECFAに反対するため15万人を動員し、何億と言う金を使って一日だけデモ行進をしたが、その効果は一日で終った。

少ない資金でタイムスに載せた一篇の宣言は永久であり、台湾アイデンティティを鼓舞する効果は15万人のデモ行進より遥かに大きく永続すると私は確信している。

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