2011年7月30日土曜日

2011年人身売買報告書

2011年人身売買報告書(抜粋・日本に関する報告)

憂国ジャーナル

2011年6月28日火曜日
Trafficking in Persons Report 2011 米国務省人権報告書2011
http://yukokuja-naru.blogspot.com/2011/06/trafficking-in-persons-report-2011.html


下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

国務省人身売買監視対策室

2011年6月27日

日本(第2階層)

 日本は、強制労働や性目的の人身売買の被害者である男女や子どもの目的国、供給国、通過国である。中国、インドネシア、フィリピン、ベトナム、その他のアジア諸国からの移住労働者は男女共に、時として強制労働の被害者になることがある。東アジア、東南アジア、また過去には東ヨーロッパ、ロシア、中南米から雇用あるいは偽装結婚のために日本にやって来た女性や子どもの中には、売春を強要される者もいた。本報告書の対象期間中、日本人被害者の人身売買が増えた。この中には日本国民の子どもとして外国で生まれ、後に日本国籍を取得した子どもも含まれる。また人身売買業者は、強制売春を目的に外国人女性を日本へ容易に入国させるために、こうした外国人女性と日本人男性との偽装結婚を引き続き利用した。政府および非政府組織(NGO)は、子どもの人身売買被害者の認知数が増加したと報告している。日本の組織犯罪集団(ヤクザ)が、直接的にも間接的にも、日本における人身売買で重要な役割を果たしているとみられる。人身売買業者は、借金による束縛、暴力や強制送還の脅し、恐喝、被害者を支配するためのその他の精神的な威圧手段を用い、被害者の移動を厳しく制限する。強制売春の被害者は契約開始時点で最高5万ドルもの借金を負っている場合があり、ほとんどの被害者はさらに、生活費、医療費、その他の必要経費を雇用主に支払うよう要求され、容易に債務奴隷とされる状態に置かれた。また素行の悪さを理由として「罰金」が当初の借金に加算された。売春宿の運営者によるこうした借金の計算方法は不透明であった。本報告書の対象期間中に認知された被害者の中には、ストリップクラブやホステスのいるバーで搾取的な条件で労働を強制された者もいたが、客との性行為の強要はなかったと報告されている。日本は、東アジアから北米に売買される人々の通過国でもある。日本人男性は依然として、東南アジアにおける児童買春ツアーの需要の大きな源泉となっている。

 日本政府は、外国人研修生・技能実習生制度(以下「外国人研修生制度」とする)における強制労働の存在を公式には認めていないが、マスコミやNGOは人身売買という状態の一因となる借金による束縛、移動の制限、賃金や残業代の未払い、詐欺、研修生を他の雇用主の下で働かせるなど、悪用事例を引き続き報告している。研修生の大半は中国人であり、この制度への応募のために、中国人ブローカーに1400ドル超の手数料と最高で4000ドルの、現在では違法な保証金を支払い、自宅を担保にしている。2010年末にNGOが日本国内の中国人研修生を対象に実施した調査では、研修生が不当な待遇を報告したり研修を切り上げようとすると、通常、ブローカーによって保証金が差し押さえられることが分かった。また逃亡や外部との連絡を防ぐために、パスポートや渡航書類を取り上げられ、移動を制限されたと報告した研修生もいた。

 日本政府は、人身売買撲滅のための最低基準を十分に満たしていないが、満たすべく著しく努力している。日本は、国内で認知された外国人被害者の帰国のために国際移住機関(IOM)に対し、ある程度の資金を拠出した。しかし、人身売買被害者の支援に特化した政府の資金は、特に日本の豊かさと日本における人身売買問題の規模に比べると少額であった。2010年に日本政府は、法執行官および司法官に向けた人身売買被害者認知に関するマニュアルを発行するとともに、日本の人身売買防止の強化に向け、国民の意識啓発に関するロードマップを作成した。また政府は、強制売春のための女性の人身売買を処罰、防止する取り組みについても報告している。しかし、外国人労働者に対する不当な待遇についての信頼できる報告があったにもかかわらず、外国人研修生制度の悪用に対する日本政府の取り組みは不十分であった。政府は、外国人労働者が強制労働の被害を受けやすくなるような行為を減らす措置をいくつか取ったが、強制労働の犯罪に対する法執行は不十分であると報告しており、強制労働の被害者として認知あるいは保護した者は1人もいなかった。さらに日本では、人身売買被害者に限定したサービスが不足していることから、強制売春の被害者に対する保護体制も依然として不十分である。

日本への勧告:専用の法執行部署、人身売買被害者専用シェルター、同被害者への法的支援等の人身売買対策の取り組みに対し、日本政府の一層の資源を投じる。あらゆる形態の人身売買を禁止し、十分に厳しい処罰を規定する包括的な人身売買対策法案の起草と法の制定を検討する。外国人研修生制度下での強制労働を含む強制労働の行為を捜査、起訴し、同行為に対して十分に厳しい実刑判決を科す取り組みを大幅に強化させる。また、労働担当部署に報告される悪用事例が刑事担当当局の捜査に委ねられるよう徹底する。外国人研修生制度における強制労働の一因となる保証金、罰則の合意、パスポートの取り上げ、その他の行為の禁止を実施する。法律を執行し強制売春の加害者を厳しく処罰するための取り組みを引き続き拡大する。人身売買や関連犯罪の政府当局による共犯を積極的に捜査し、正当な理由がある場合は処罰するよう一層の取り組みを行う。より多くの人身売買被害者を認知するために、正式な被害者認知手続きをさらに拡大、実施し、売春の被逮捕者、外国人研修生・技能実習生、その他の移住労働者と接する職員を対象に被害者認知手続きの活用について研修を行う。人身売買されたことに直接起因する違法行為を犯したことで、人身売買被害者が罰せられることのないよう徹底する。男性被害者や強制労働の被害者を含む全ての人身売買被害者のための保護政策を確立する。医療・法的支援サービスを含む保護支援サービスを無料とし、そうしたサービスが利用可能であることを被害者に積極的に知らせることで、保護支援サービスが被害者に全面的に利用可能となるよう徹底する。児童買春ツアーに関与する日本人の捜査、正当な理由がある場合の起訴、処罰を一層積極的に行う。

訴追

 本報告書の対象期間中、日本政府は人身売買対策のためにある程度の法執行措置を取ったが、全体として不十分であった。政府は強制売春に対する法執行の取り組みを強化したと報告されているが、強制労働に対するいかなる取り組みも報告していない。日本は包括的な人身売買対策法を持たないが、人身売買を禁止する2005年の刑法改正や、その他のさまざまな刑事法の条文や法律を使えば一部の人身売買の犯罪は起訴し得る。しかし、既存の法的枠組みが、すべての過酷な形態の人身売買を刑事罰の対象とするほどに十分に包括的なものかどうかは明確でない。これらの法律は1年から10年の懲役刑という刑罰を規定している。これは十分に厳格であり、他の重罪に対して規定されている刑罰とおおむね同等である。本報告書の対象期間中、日本政府は、人身売買に関連するとされる19件の犯罪を捜査し、その結果、入国管理法および売春防止法などの各種の法律に基づき、24人を検挙したと報告した。政府のデータが不完全なため、そのうち何件で実際に人身売買という違法行為があったかは不明である。日本政府はさまざまな人身売買関連の罪で14人に有罪判決を下したが、その大半は人身売買罪の規定以外の法律に基づいて有罪となった。有罪判決を受けた14人のうち6人が執行猶予なしで2年6カ月から4年6カ月の懲役と罰金、6人が執行猶予付きで約1年から2年の懲役と罰金、1人は罰金刑のみを科された。10件は証拠不十分で不起訴となった。性目的の人身売買に対するこうした法執行の取り組みは、昨年報告された有罪判決数の5件から強化されている。警察庁、法務省、入国管理局、および検察庁は職員に対し、IOMやNGOにより行われる研修プログラムを含め、人身売買の捜査および起訴の手法についての研修を定期的に実施した。日本政府は2010年7月、法執行官、司法官、その他の政府担当官による人身売買の犯罪の認知、捜査、被害者保護措置の実施を支援するため、10ページのマニュアルを配布した。

 それにもかかわらず、強制労働行為に対する日本の刑事捜査および処罰の取り組みは不十分であった。日本の労働基準法第5条は強制労働を禁じ、罰則として1年以上10年以下の懲役刑または20万円(2400ドル)以上300万円(3万6000ドル)以下の罰金を定めているが、一般にその適用は雇用主の行為に限られている。2010年7月の省令により、外国人研修生制度応募者に保証金を求めたり、素行の悪さ、または研修の切り上げを理由に罰金を科す行為が禁止された。しかし、このような禁止規定があるにもかかわらず、外国人研修生制度における強制労働、あるいは強制労働につながるその他の違法行為を理由として逮捕、起訴、有罪判決、科刑が当局により行われた者は1人もいなかった。本報告書の対象期間中、日本政府が強制労働の疑いで捜査した事例はわずか3件だった。外国人研修生制度の悪用事例についてはほとんどが示談、行政審判または民事訴訟で決着が付けられるため、罰金のように、十分に厳しい処罰になっておらず、犯罪の凶悪性も反映していない。一例を挙げると、2010年11月、労働基準監督署は31歳の中国人研修生が過労で死亡したと公式に断定した。しかしこの研修生が死亡する前の12カ月の間、十分な報酬も与えられずに週80時間以上働いていたにもかかわらず、企業にはわずか50万円(6000ドル)の罰金を科されたにすぎず、研修生の死亡について懲役刑を科されるなどの刑事責任を問われた者は誰もいなかった。

 また政府は、人身売買の犯罪に関する行政の共犯関係にも対処しなかった。腐敗は、売春産業など日本で社会的に容認された巨大な娯楽産業において依然として深刻な問題であるが、本報告書の対象期間中、人身売買関連の共犯を理由とする政府職員に対する捜査、逮捕、起訴、有罪判決、または懲役刑の申し渡しの報告は政府からなかった。

保護

 日本政府が認知した性目的の人身売買の被害者は昨年に比べて増えたが、人身売買の被害者、中でも強制労働の被害者を保護する取り組みは、全体として依然、不十分であった。本報告書の対象期間中、性目的の人身売買被害者として男性1人を含む43人が認知された。これは昨年報告された被害者の17人から増加しているが、2008年に認知された被害者数(37人)と同程度であり、2005年から07年までの各年に認知された被害者数に比べると減少している。日本政府当局は2010年7月、人身売買被害者の認知に向け、「人身取引事案の取扱方法(被害者の認知に関する措置)」と題するマニュアルを作成し、各政府機関に配布した。しかしこのマニュアルは、外国からの移民をその意に反して搾取していることを示す兆候の特定よりも、外国からの移民の在留資格や日本への入国手段の特定に重点を置いているようである。このマニュアルが被害者の認知につながったかどうか、また全国的に広く使用されたかどうかは明確ではない。人身売買被害者の中には、当局によって被害者と認知される前に逮捕あるいは拘束された者もいたと報告されている。外国人研修生制度の下で多くの労働者が強制労働の兆候がある悪用行為に直面していることを示す十分な証拠があったにもかかわらず、本報告書の対象期間中、日本政府は強制労働の被害者を1人も認知しなかった。日本政府には強制労働の被害者を対象とする具体的な保護政策がなく、これまでに労働搾取目的の人身売買の被害者を認知したことはない。また、強制売春目的の人身売買の被害者として認知された人に提供されたサービスも不十分であった。日本では人身売買被害者専用のシェルターが依然として不足している。認知された被害者のうち32人は、配偶者による暴力の被害者に向けた政府のシェルターである婦人相談所で保護されたが、こうした人身売買被害者たちはこれらの多目的シェルター外への移動を制限され、シェルター内でのサービスも不十分であったと報告されている。こうした政府のシェルターでは場所や言語能力に制限があるため、婦人相談所が被害者を政府の補助を受けているNGOシェルターへ委託することもあった。例えば、男性の人身売買被害者に対する政府による保護サービスは依然として不足しているため、本報告書の対象期間中に認知された唯一の男性被害者はNGOシェルターで保護サービスの提供を受けた。同期間中、IOMは日本政府からの資金提供を受けて、外国人の人身売買被害者を20人保護した。政府は婦人相談所における被害者の心理的なカウンセリングサービスや関連する通訳の費用を負担したが、NGOシェルターで保護された被害者の中にはこうしたケアを受けなかった者もいた。被害者が婦人相談所に滞在中に生じた医療サービス費の全額を政府が負担するプログラムが存在するが、こうしたサービスの運営制度がうまく組織化されていないため、結果として、利用可能な医療サービスを全て受けなかった人身売買被害者もいた。政府が出資する日本司法支援センター(法テラス)は、人身売買被害者も含め、困窮した犯罪被害者に無料で法的支援を提供しているが、政府やNGOのシェルターに保護されている被害者に、利用可能なサービスの情報が必ずしも提供されているわけではなかった。被害者が子どもの場合、婦人相談所は地域の児童相談所と協力して被害者にシェルターやサービスを提供する。政府の報告によると、本報告書の対象期間中、このような方法で支援が提供された被害者は1人だった。また当局は、人身売買業者の捜査と訴追への参加を被害者に奨励していると報告したが、被害者に対して、例えば就労やその他の手段で収入を得ることを可能とするなど、参加を促す奨励策を提供しなかった。さらに、婦人相談所では比較的行動が制限され、また被害者が就労できないことから、ほとんどの被害者は帰国を求めた。認知された人身売買被害者が帰国を恐れる場合、長期間の在留許可の取得が可能だが、これまでにこの許可を申請、取得した人は1人しかいない。

防止

 本報告書の対象期間中、日本政府は人身売買防止に取り組んだが、その取り組みは限定的だった。内閣官房副長官補が議長を務める「人身取引に関する関係省庁連絡会議」が引き続き会合を開いた。そして「国民の意識啓発に関するロードマップ」について合意し、人身売買に対する意識向上を目的とするポスターを発表し、パンフレットを配布した。3万3000枚を超えるポスターと5万部を超えるリーフレットが各地の地方自治体、警察署、地域施設、大学、入国管理局、空港に配布された。しかしNGOの報告によると、このキャンペーンはほとんど効果がなく、商業的性サービスの消費者には影響を及ぼさなかった。入国管理局は人身売買に関する意識向上のためのオンライン・キャンペーンを実施するとともに、小冊子を用いて各地の入国管理局に対し人身売買の兆候に注意を払うよう奨励した。2010年7月に日本政府は、外国人研修生制度の下での強制労働状態の防止と、研修参加者向けの法的救済の拡充を目指し、同制度に関する規則を改正して研修1年目の参加者が労働基準監督署を利用できるようにし、保証金の徴収や、素行の悪さ、または研修の切り上げを理由に罰金を科すことを禁止した。日本政府は保証金の禁止を実施する取り組みについては報告しておらず、この新たな規則が研修生・実習生の受け入れ機関による不正行為の減少に貢献したかどうかは定かでない。NGOの報告によると、ブローカーは研修参加者に対し、日本の当局には保証金や「罰則の合意」の存在を否定するよう指示した。日本政府は引き続き、世界各地における多数の人身売買対策プロジェクトに資金を提供した。長年、多数の日本人男性が、子どもとの性行為を目的に、アジア諸国、特にフィリピン、カンボジア、タイへ渡航した。日本は海外で児童買春ツアーに関与する日本国民を起訴する法的権限を有しており、この法律に基づき2011年2月に男性1人を逮捕した。2002年以降、この法律に基づき合計8人が有罪判決を受けている。日本は、国連で2000年に採択された人身売買議定書を締結していない。

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